こんにちは。ふぐふぐ先生です。これまでたくさんの学校から相談を受けてきましたが、通常級でも支援級でも高等学校でも、非常に多くの先生方が抱える悩みが、「授業中の立ち歩き」、「すぐ騒がしくなる」というものです。
この記事では、次のような事を紹介します。
1.立ち歩きや、騒がしくなる背景の解説
2.おすすめの解消法の1つ「1分間リフレッシュ」
1.立ち歩きや騒がしくなる背景
背景には、必ず子どもの困り感があります。
タイプ①多動性衝動性のある子・運動感覚ニーズがある子
いわゆるADHD傾向のある子は、そもそもじっとしているのが苦手です。本人に悪気はなくても、一定時間座っていると、意識しなくても立ち上がりたくなっちゃう(多動性)。それに、前の席の子が消しゴムを落としたら即反応して拾いたくなって、そのまま別の子の可愛い筆箱が目に入ると、今度はそっちに行って筆箱を触りたくなっちゃう(衝動性)。そうこうしてるうちに、クラスメイトから文句を言われて、それに対して言い返して、手に持っていた筆箱を床に投げつけて・・・。こんなふうにトラブルが発展していきます。多くの先生が、こういったエピソードに対して、「あるある」と思うのではないでしょうか。
これ全て、子どもたちに悪気はありません。意識しなくても、こんなふうになっちゃう。そして、気づいた時には先生から怖い目で叱られている。失敗経験の繰り返しです。
大切なのは、事前の仕掛け(予防)です。こういう子の多動性を満たしてあげるような活動を予防的に行う事です。それでトラブルが1つでも減り、そして「お!しっかり取り組んでるね!」と褒められる機会が1つでも増えれば、その子の悪循環は、好循環に変わっていくかもしれません。繰り返し言いますが、「予防」をしっかりしていくことが、悪循環を好循環に変えるための仕掛けになるのです。
それから、運動感覚のニーズがある子。
自閉症スペクトラムの傾向がある子には、この運動感覚のニーズがある子が多いのですが、診断を受けていない子や、一見して自閉症スペクトラムと分かりにくい子の場合は、見落とされがちな点です。
運動感覚のニーズとして、最も分かりやすい例は
・その場でクルクルと回りたい または、回っている物を見続けたい
・身体を前後や左右に揺らしたい(ロッキング)
・ジャンプしたい
などがあります。これは非常に分かりやすい例なので、こういった行動に対して「動いちゃだめ」という指導をしてしまうことは、本人の困り感を無視した指導だし、うまくいかないということは多くの先生が理解していることと思います。でも、運動感覚のニーズが、授業中の「立ち歩き」や「鉛筆で机を叩いて音を鳴らす」、「急に大きな声を出す」「廊下を走る」といった行動に現れている場合は、「やめなさい」という指導だけで済まされてしまい、悪循環に入ってしまう、ということが起こりがちです。
運動感覚のニーズがある子は、私たちが3食を普通に食べたい、というニーズと同じくらい、運動刺激を必要としているのです。だから、「やめなさい」ではなく、別の活動で運動感覚のニーズを満たせるような支援が必要なのです。
タイプ②注目欲求が満たされていない子
授業中に立ち歩いたり騒いだりする子の背景の2つ目として、「注目欲求が満たされていない」ということがあります。例えば、家族に赤ちゃんが産まれて、お父さん・お母さんの注目が赤ちゃんに向いている、という時期に、一時的に授業中に注目をひく行動(わざと叱られるような事をする)が増える、ということはよくあります。これは、「家庭が悪い」ということではなく、多くの場合は、自然な現象と言えるでしょう。
そんなふうに、理由はいろいろですが、その子の注目欲求が満たされていない時に、立ち歩いたり騒いだりする行動が増えてしまう。その際に、先生がその子を叱るばっかりだと、その子は先生に叱られることで、もっと注目を浴びたいと思うようになり、ますます騒ぐ行動は増えていきます。これは典型的な悪循環です。子どもの困り感に寄り添うなら、別のことで注目が満たされるような工夫をすべきなのです。
今回の記事では、タイプ①の「多動性衝動性がある子」「運動感覚のニーズがある子」に効果的な支援法、「1分間リフレッシュ」を紹介します。
タイプ②「注目欲求が満たされていない子」への支援方法は、別の記事で深掘りしていますので、ぜひお読み下さい。
「1分間リフレッシュ」
先ほどお伝えしたタイプの子どもたちは、45分などの1コマの授業時間、集中し続けることはとっても苦労のいることです。小学校の低学年であれば、先生方は自然と授業の合間にリフレッシュ活動を入れていることと思います。でも、こうしたタイプの子どもたちは、高学年であっても中学生であっても、さらに言えば高校生や成人であっても、時々のリフレッシュタイムを必要としています。
たったの1分でOKです。リフレッシュタイムをうまく使うことで、叱られる行動(失敗経験)が1つでも減り、そして「集中できてるね!」と褒められる機会が1つでも増えれば、良い歯車が回り始めます。
1分間リフレッシュの具体例
<後だしジャンケン>
①「今から後出しジャンケン大会をやるよ。先生が『ジャンケン ポン、ポン』と言うよ。2回目の『ポン』でみんなは出して、先生に勝つようにしてね。では皆さん、立って下さい。最初はゆっくりで、だんだん速くしていくよ!」
②レベルアップ
「みんなすごい集中力だね!次はレベルアップしよう。『後だし“負け”ジャンケン』だよ。2回目の『ポン』で、先生に負けるように出してね。よーく見てないとできないよ。」
<後だしジャンケン 足バージョン>
上記の「後だしジャンケン」に飽きた頃にやるのがおすすめ。
①「今日は特別に、いつもの後出しジャンケンを「足バージョン」でやります。いつもよりレベルアップしてるから、みんなの集中力もアップさせてね!やり方はいつもと同じ。足でやるだけだよ。」
こんな説明をしてから、①後出しジャンケン足バージョン、②後出し“負け”ジャンケン足バージョンを行います。普通のジャンケンより、全身を使うので、自然とジャンプしたり身体を揺らしたりできて、運動刺激を取り入れやすくなります。
<1分間ジャンケン連続チャレンジ>
続いて、これもジャンケンのシリーズです。
「これから、『1分間ジャンケン連続チャレンジ』をするよ。まずは、プリントを裏返して、鉛筆を出しておいてください。そして、みんなその場で立ちましょう。先生がみんなと一斉にジャンケンをします。みんなは、先生に勝ったらプリントの裏に丸印を1つ書きます。負けた人やあいこの人は何も書きません。これを連続で1分間やるよ。最後に、何個丸がたまったかチェックしよね。では、早速やってみよう。ジャンケン、ポン。さあ、勝った人は丸をつけてね。次の勝負!ジャンケン、ポン!」
これを1分間続けます。ポイントは、座ったままではなく、立って行うところです。その方が子どもたちは自然と運動刺激を取り入れて、リフレッシュにつながりやすくなります。
・立って行うと運動刺激を満たしやすい
<リズム真似チャレンジ>
①手拍子でチャレンジ
「今からリズム真似チャレンジをするよ。先生が手拍子でリズムを打つから、みんなはそれを真似してね。ゲームの最中はおしゃべりしてもOKだけど、1分後にタイマーが鳴ったら終わるから、終わったらきちんと静かにしようね。では皆さん、立って下さい。(1分間のタイマーをセット)では始めましょう。パン パン パパン(手拍子)、はい。」
こうして、先生の「はい」の合図で子どもたちがリズムの真似をします。これも立って行った方が運動刺激が入りやすいです。
②全身でチャレンジ
手拍子でのチャレンジに慣れてきたら、今度はお腹を叩いたり膝を叩いたりして発展させていきます。こうすると、さらに運動刺激を取り入れるてリフレッシュにつながります。
以上が1分間リフレッシュの具体例でした。みなさんのクラスの子どもたちに合う活動は見つかりましたか?毎日違った活動をする必要はありません。子どもたちのお気に入りの活動が見つかれば、ルーティンにして、何度やっても良いと思います。意外と、飽きずに楽しんでくれるものです。
こうした活動を取り入れると、「逆に騒がしくなるのでは?」と思われる方もいますよね。活動の前に、こうした説明をしてみて下さい。「これからやるのは、みんなが授業に集中できるようになるためのリフレッシュだよ。テンション上がっちゃって、そのあとの授業が騒がしくなったら意味がない。1分間楽しんだ後は、スッと静かに活動に戻ろう!それがうまくできたら、また明日もリフレッシュをやるからね」という感じです。
さらに、1分後にアラームが鳴るようにセットすると効果的です。
それから、リフレッシュ活動が終わった後にやるべき事が事前に、具体的に示されていることはとっても大切です。やる事が分からないと、リフレッシュが終わった後も楽しさの余韻に浸って騒がしさが増していくでしょう。
・終わったら静かにしてね、と予告する
・タイマー、アラームをセットする
・終わった後にやるべきことを具体的に示しておく。
もちろん、体育や美術、音楽の時間は、リフレッシュタイムが必要ないことが多いです。座学の授業も、「図書室に調べに行こう」など動きがある時は必要ない場合が多いです。この授業は動きが少ない授業だな、と思うその授業だけで構いません。ぜひ1分間リフレッシュを取り入れ、そしてその後に、集中している子ども達を褒めてあげてください。
タイプ②『注目欲求が満たされていない子』が授業中に立ち歩く、騒いでしまうことへの支援策は別記事にあります。ぜひ参考にしてみてください。
今回もお読みいただき、ありがとうございました!
子どもたちが成功を感じる機会が1日1つでも増えると良いな、と願っています。