いつもふぐふぐ先生の記事をお読みいただきありがとうございます。
今日の記事では『マイ・ルールブック』というツールを紹介します。学校での事を題材にしていますが、支援級や特別支援学校の先生、保育士さん、福祉事業所の職員、お父さんお母さんなど、幅広い層にお届けするつもりで書いています。対象年齢も広く、就学前から成人まで適用できます。
では本題です。今回紹介するのは、子ども1人ひとりに必要な『マイ・ルールブック』です。普段先生方や支援者の皆さんは、子どもたちにソーシャルスキル、対人関係やルールなどについて根気強く伝えていますよね。この『マイ・ルールブック』を作ることで、ぐっと効率良く、分かりやすく、楽しく社会性を身につけていくことができます!
この記事の最後に、作成例のPDFファイルがあります。ダウンロードしてご覧下さい。
ルールブックに名前をつける
『マイ・ルールブック』というのは仮の名前です。その子が気にいるような名前をつけるのが大切です!定番としては、
・「学校で気持ちよく過ごすためのルールブック」
などがあります。その他、
- 「◯◯くんの スーパースターBOOK」
- 「お姫様ガイドブック」
- 「レベルアップガイド」
など、その子が好みそうな名前をつけてあげることができます。
ルールブックに興味を持つような内容選び
「ルール」を決められるのが大嫌いな子、いませんか?大人が「この子にはルールブックを持たせたい」と思う子どもたちは、たいていルール嫌いなのです。だから、まずは「ルールブック」に興味を示すための仕掛けが必要です。
- ルールブックに興味を持たせる
- このルールブックは自分にとって役に立つと思えるようにする
そのために優先して取り組むべき事は、「その子がどんな人になりたいか」に注目し、それを達成するためのルールやコツについてのページを作ることです。
例えば、お姫様みたいになりたい小学生や就学前の女の子には、「朝、髪にブラシをかける」というページから作り始めると良いでしょう。既に達成している事でもOKです。他にもいくつか例を紹介していきます。
・お姫様みたいになりたい子
→ 朝、髪にブラシをかけよう。
(記事の最後にダウンロード用ファイルがあります。)
・電車の運転士になりたい子
→ 運転士は時間が大事!給食開始の時間を守ろう。
(記事の最後にダウンロード用ファイルがあります。)
・アイドルになりたい子
→ 昇降口から教室までのチャレンジ!朝の挨拶は素敵な笑顔で。
(記事の最後にダウンロード用ファイルがあります。)
★ここでワンポイント。
ルールを作るときは、大きく作りすぎない事が大切です。「時間を守ろう」ではなく、「給食開始の時間を守ろう」の方が適切です。なぜなら、いつでも時間を守るように意識することは不可能です。ルールを意識すべき時を具体的に絞ることが大切です。それから、支援者側もその方が支援がしやすくなります。
予告する時は、給食開始の3分前にルールブックのページを開いて指差して伝えることで、注意喚起することができます。
それから、多くの子どもは、頑張っているところを誰かに見てもらえないと、その頑張りは続きません。「給食開始の時」とタイミングを絞っておくと、支援者はその子が達成するかどうかを注意して見ておくことができます。達成したら、先生が“見てるよ!”という視線を投げかけることもできますし、言葉やシールなどで分かりやすく褒めてあげることもできます。
挨拶のルールも同じです。「笑顔で挨拶をしよう」ではなく、朝の昇降口から教室までの間、というふうにタイミングを絞ってルール化してあげることで、子どもも意識しやすいし、支援者も褒めやすくなります。
暗黙のルール
世の中は「暗黙のルール」であふれています。暗黙のルールを理解するのが難しく、トラブルの原因になっている子どもたちは非常に多いです。周囲から「空気が読めない」という視線で見られたりして、とても辛いものです。支援者は、暗黙のルールを理解できない子どもたちの困り感に寄り添う必要があります。「なんでこんな事するの!?」ではなく、「繰り返し教える必要がある」「本人も困っている」という視点に立つことが大切です。
暗黙のルール例
・会話していない時には人を5秒以上見つめない。
人のことが気になったら、別のことに集中してみよう。
(記事の最後にダウンロード用ファイルがあります。)
・同じ質問は2回まで。
何度も質問したい時は、先生とお話ししましょう。
※「ニヤニヤしている」と見られてしまう子もいます。
・反省している気持ちがある時は、口を閉じて下を向こう。
その方が、あなたの気持ちは伝わるよ。
中学生から成人期にかけて、恋愛する際に暗黙のルールが分からなくて苦労する、という話がとても多いです。なるべく早いうちに暗黙のルールに触れていくことが大切です。
対人関係のルール
大人が子どもに「こうなってほしい」という願いもあるでしょう。でも、子どもの願いや困り感を中心に選んだスキルを盛り込んでいくことも大切です。
・誰かが転んだら「大丈夫?」と言おう。
(記事の最後にダウンロード用ファイルがあります。)
・誰かとぶつかったら、自分が悪くなくても「ごめんね」と言おう。
・お土産をもらったら、好きなものでなくてもお礼を言おう。
感情コントロールのルール
・イライラした時は、人を傷つける・物に当たるのではなく、言葉で伝えよう。
「もうやだ!」「やめて!」「悔しい」
・イライラした時は、その場から離れても大丈夫。
・気持ちの温度計ツールを使ったルール
(記事の最後にダウンロード用ファイルがあります。)
ルールブックの置き場所
せっかく大人も子どもも気に入るルールブックができても、それが活用されずに眠っている、というのは残念です。子どもが活用しなかった場合、「この子にはルールブックは合わなかった」と考える前に、ちゃんと使えるための工夫がされているかどうかを見直してみましょう。
工夫① 首からぶら下げる
ルールブックに紐をつけて、首からぶら下げるのは非常に効果的です!(遊具にひっかかったりして危ない場合は、安全性の高い市販の名札紐などにしましょう)
なぜかというと、「見えないものは、無いもの」という特性をもつ子どもたちが非常に多いからです。ルールを視覚化しても、見えていなければ、頭の中にイメージすることができない。でも、首からぶら下げていることで、そのルールブックを身体感覚としても視覚的にも感じていられるので、ルールを思い起こす機会が増えるのです。
工夫② 机の横に引っ掛ける
たいてい、学習机の横にはフックなどがついています。そのフックにひっかけておく。工夫①と同じ理由ですが、見えないところに置いておくよりも、時々目に入るような所に置いておく方が、ルールを思い起こす機会が増えます。
工夫③ 先生がいつでも持っておく
自分で思い起こすことが難しく、支援者が適宜ルールを伝えてあげる必要がある場合は、先生が持っておくのも良いでしょう。ただし、子どもたちは、人にルールをおしつけられることが大嫌いです。行動を制限するために先生がルールブックを使うのではなく、できた時に褒めるために使う、というくらいが丁度いいでしょう。それから、予告のために使うのも良いです。ルールブックを意識すればうまくいきそうな場面で、先生がサッとブックを取り出して、それを指さして子どもに見せる。そうすることで、子どもの成功が増えて、それを支援者が褒めることができれば、それは非常に良い活用方法です。
ルールブックの基本的な解説は以上です。
大切なポイントを確認しておきます。大人が子どもの行動をコントロールしようとする意図や、大人の都合を押し付けるようなルールブックでは、あっという間に子どもは使わなくなります。子どもの願いを叶えるためのルールブック、子どもの困り感に寄り添うルールブックであるべきです。そして、うまくいったときに褒めるためのツールでもあるべきです。
ルールブックが、子どもにとって「便利なもの」「使いたいもの」と感じられるようになると、子どもの方から「それ、ルールブックに書いて!」と言ってくることもあります。そうなったら本当に大成功です。
この記事で紹介したルールブックはダウンロードできます。
是非、子ども一人ひとりに合った「マイルールブック」を作ってみてください。
ここまでお読み頂きありがとうございました!みなさんが作成したルールブック、「こんな内容を盛り込んでみた」などありましたら、ぜひ教えて頂けると嬉しいです。